世界最大規模のハーフマラソン
グレート ノースラン Great North Run 21km
開催日:2005年 9月 17日 場所:イギリス ニューキャッスル
「あなたは何のために走りますか?」
1.世界最大規模のハーフマラソ
トライアスロンではありませんが、 イギリスで開催されている”世界最大規模のハーフマラソン”「Great North Run」に参加しました。
その規模も驚きましたが、「何のために走るのか?」を あらためて考える良いきっかけを得たレースでした。
2.世界最大規模のハーフマラソン
この大会、「世界でもっとも規模が大きいハーフマラソン」で、参加者なんと5万人です!
開催場所はロンドンから約450km北に位置するニューキャッスル(Newcastle)という街です。
スタートエリアには、エリート招待選手を先頭に5万人がずらりと並び、その列の長さは約1mile(1.6km)あります。
そのため、最終走者がスタートラインを越えたのは、スタート合図後30分以上かかってからだったそうです。
スタート前はこんな感じです。
コース上もランナーで溢れていますので、ほとんど自分のペースで走ることはできません。しかし、英人はこんな状況でも文句ひとつ言わずに楽しんで走っていました。それには理由があるんです・・・
3.走る目的は・・・?
実は、
この大会に限らず、多くの英人はチャリティーを目的にマラソン大会に参加しているんです。(プロ選手は違いますが・・・)
「チャリティーでマラソン」と言われても分かりにくと思いますが、以下のようなしくみになっています。
1)何のチャリティーに参加するのか自分で決めます。
2)マラソンで完走することを条件に、友人知人に「スポンサー」になってもらい、「チャリティー(寄付金)」を集めます。
たとえば、「ガン撲滅のチャリティーで走るから、頑張って完走するから、私のスポンサーになって!」と友人知人に頼み、お金を集めます。 (一人千円くらいが目安)
3)頑張って完走し、完走後、集めたお金を慈善団体に寄付します。
このように「マラソン大会」というイベントをきっかけにチャリティー活動を行っています。
「じゃあ、ランナーの参加費はタダなの?」という質問が出てきそうですが、ランナーはちゃんと自分で参加費を払っています。
英人は「チャリティー(慈善活動)」をたいへん好みますので、チャリティーのスポンサーもチャリティーのために走る人についても、たいへん高く評価します。
このような文化がありますので、多くのランナーはチャリティーチームに属して、そのチーム全体でチャリティーを行っています。
今回の大会でも70%以上はチャリティーで走っていると言われていて、チャリティーチームのウエアーを着ているランナーを数多く見かけました。 ウエアーデザインにチャリティー名が入っているのですぐ分かるんです。 色々なデザインがあって、見ていても楽しかったです。
- A helping hand for children
- Cancer research UK
- Breast Cancer
- Child line
- Run for clean water
-
もちろん、チームに属していない人でも事前集金して、任意団体に寄付したり、当日、チャリティーボックスに寄付したりする人も多くいます。
中には、「昨年、ガンで他界した妹のために・・・」と背中に書いて走っている人や車イスの奥さんを押しながら走ったりしている人もいました。
チャリティーとは少し違いますが、その人への思いを込めて走っているんですね。
ウエアを見ているだけでも楽しいです。
日本では、体力向上、健康維持など「自分のため」にマラソンを走る人が多いのに対して、英人は「人のため」に走る人が多いんです。
だから、
英人にとっては「完走しチャリティーを実行すること」が目的なので、待たされたり混んでたりしてもイライラせず、楽しんで走れるのかもしれません。
動物やバットマン、バナナマンなどに仮装して走り、見ている人だけでなく自分自身も楽しんじゃっている人もいっぱいいました。
ちなみに、 今回参加したGreat North Run(参加50000人)では毎回、10億円ほどのチャリティーが集まります。ひえー
また、世界的に有名なロンドンマラソン(参加46500人)では、60億円ほどのチャリティーが集まるそうです。どひゃー
大会の裏側で、”よい意味”で大きなお金が動いているんです。 私は今回、事前にチャリティー集めをしていかなかったので、会場で心ばかりの寄付を自分のサイフから出してきました。
トライアスロン大会(特にヨーロッパ)でも「チャリティー出場」の出場枠が設定されている大会があります。興味のある方は大会概要を見てください。
タイムを狙うマラソンだけでなく、「人のために走るマラソンも楽しいなあ〜」と実感し、心身ともに充実した1日を過ごすことができました。
チャリティーのために汗を流して走っていた高齢の夫婦がとても輝いて見えました。
こんなマラソン観を持った英人ってやっぱり「Ladies & Gentleman」ですね。
4.おまけ写真集
スタート地点で荷物を預けると2階建てバスがゴール地点まで運んでくれます。イギリスらしいでしょ?
参加者5万人の荷物だけあって、バスは32台も走っていました!
スタート荷物を預かってくれる2階建てバスです。
コースの写真です。走りながら撮ってみました。
みんなマイペースです。完走してチャリティーすることが大切ですから・・・
ゴール地点は芝生の上です。
ゴールエリアです。みんな完走してホッとしています。
5.ご冥福
当日は9月の北部イギリスにしては以上に気温が高く晴天でした。
夕方聞いた悲しいニュースですが、このレースで4人の方が熱中症などでお亡くなりになりました。
私の観察では以下のような理由が要因になったと思います。
・イギリス人は暑さに慣れていない。通常秋気温20℃→当日29℃
・チャリティーで走る多くの人は練習もほとんどせずに出場している。
・給水の大切さ(必要性)を理解してない人が多い。
・救急車の通行路が確保されておらず、到着が遅れた
上記のとおり、参加者本人、運営面ともに責任があると思いますが、 残念なことです。
日本であれば、このような事態が起こるとレース運営者が責められて 次年度以降の開催が危うくなりますが、イギリスでは「ランナーの自己責任」との考え方が強いので運営側の責任追及はほとんどなされません。
事実、次年度もレースは通常通り開催されました。
ちなみに 次年度大会では死亡者は「1人だけだった」とのことです。 (あらためてご冥福を祈ります)
6.おまけのお話
マラソンだけでなく、小学校などでも頻繁にチャリティーが行われます。
たとえば、「子どもたちが障害物競争を走るので、スポンサー協力お願いしま〜す。」「集まったチャリティー(寄付金集め)は学校の備品購入に充てます」といった具合です。
生活に余裕のある人は大人でも子供でも積極的にチャリティーに参加します。、 その行動も決して”キザ”とは見られませんし、Ladies&Gentlemenは寄付をして普通なのです。
「助け合って生きていく」という根本的な思想を反映した良い習慣であると思いました。
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